痔について知る 肛門周囲膿傷とは?
肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)とは、肛門の周囲に膿がたまった状態を指します。肛門内の「肛門腺」という小さな腺に細菌が感染し、急激に腫れて強い痛みを伴います。重症化すると発熱や全身倦怠感を引き起こすこともあり、早期の治療が必要です。

よくある症状

- おしりの皮膚が赤くなり、触ると熱を持っている
- 肛門の周囲が腫れて、ズキズキと強く痛む
- 座るのも困難になるほどの痛み
- 熱が出たり、寒気を感じる、全身がだるい など
- 自然に膿が出ると一時的に痛みが軽快する
原因と発症のメカニズム

原因の多くは、肛門腺という小さな組織に細菌が侵入し、内部に膿がたまってしまうことで発症します。きっかけとなる代表例は次の4つです。
- 下痢や軟便を繰り返している
- 時間の座位や運転が日常的にある
- 免疫力が落ちているとき(風邪・過労・睡眠不足・糖尿病 など)
- ストレスや生活習慣の乱れ
痔ろうとの関係
肛門周囲膿瘍が自然に破れて膿が出ると、一時的に症状が治まったように感じますが、実はその後、おしりの中にろう管という“トンネル”のような通り道が残ってしまい、膿がたまりやすい体質になってしまうことがあります。
この状態を「痔ろう」といい、膿が出たりひいたりを何度も繰り返す、大変つらい慢性的な病気に進行してしまいます。
肛門周囲膿瘍の段階で治療を行うことで、痔ろうへの進行を防ぐことができます。
検査について

柴田病院では、視診・触診・超音波検査などを用いて、膿瘍の部位・深さを正確に確認します。安心して診察を受けていただけるよう、プライバシーの配慮を特に心がけています。
治療方法(切開・排膿)
膿がたまっている状態では、抗生物質だけでは改善が難しく、たまった膿をしっかり出す「切開排膿(せっかいはいのう)」という処置が必要です。 怖そうに感じるかもしれませんが、局所麻酔を使うため、処置中の痛みはほとんどありません。
- 局所麻酔のもと、小さく切って膿を排出します(処置時間は10分程度です)
- 数日間はガーゼの交換や消毒を行いながら経過を観察します
- 再発を防ぐため、便通の改善や入浴習慣など生活面のアドバイスも行います
- すでに痔ろうに進行している場合は、あらためて痔ろうに対する手術を検討します
よくある質問(Q&A)
- 自然に膿が出て、痛みが引きました。もう治ったのでしょうか?
- 一時的に症状が楽になったように感じても、実は「ろう管」というトンネルのような通り道が残っていることが多く、そこにまた膿がたまってしまうことがあります。この状態を「痔ろう」といい、何度もくり返す病気に進行している可能性があるため、お早目の受診をおすすめします。
- 薬だけで治すことはできますか?
- 表面近くの小さな膿瘍であれば、抗生物質でおさまることもありますが、たまった膿をしっかり出さないと治りにくいケースがほとんどです。多くの場合は「切開して膿を出す」処置が必要となります。
- 手術は痛いですか?
- 局所麻酔で行うため、処置中の痛みはほとんどありません。術後も痛み止めを適切に使用し、痛みを最小限に抑えるよう工夫いたしますのでご安心ください。
早期受診のすすめ

「そのうち治るだろう」と膿瘍を放置してしまうと、痔ろうへと進行し、根治には手術が必要となるケースがほとんどです。
柴田病院では、6,500例以上の肛門外科手術の実績と、患者さん一人ひとりに寄り添った診療体制を整えています。「おしりの痛み」「腫れ」「発熱」があれば、どうか我慢せず、早めにご相談ください。
